適応障害ライターの奮闘記

仕事大好き!な私が、30歳を目前に適応障害に。休職、復職、転職、からの再度の適応障害・・・過去の話と現在の話を織り交ぜてブログに書き綴ります。

どこにでもないこと

クリニックの受付の人は女性2人。どちらも笑顔が素敵な方だった。

このクリニックは個人情報保護の観点で受付時に番号札を渡され、順番が来たら番号で呼ばれるシステムだ。そういえば昔行ったレディースクリニックでもそうだったなあ、なんて思いながら待合室の席につく。

私の番号は45番。予約したものの割と待った気がする。30分弱くらいかな。でも事前に読んでいた口コミにもそのようなことは書いてあったし、何よりも私の今の辛さを少しでも取り除いてくれる可能性がここにはある。そう信じていたら、時間の長さなんて気にならなかった。

 

すると診察を担当する女医さんから「45番の方、お入り下さい」と言われた。

とても冷静な口調だったため「うわ、怖い先生かな」という不安がよぎった。

 

診察室に入るとまず驚いたのが椅子だ。

よく病院にある背もたれのない丸椅子ではなく、深々と座れるソファがあった。

そうか、メンタルクリニックってこういうところから配慮されているんだな、冷静にもそう思った。そこに腰をかけたら、なんだか少し落ち着けた。

 

事前に私が書いてきた問診表を見ながら先生は淡々と質問をしてくる。

 

問診表に私は2つの悩みを書いた。

  • ADHDの疑いがあること・・・社会人になってから、時間管理がうまくいかず、多動症などの症状も見られるためADHDの可能性があると自分では思っています。もしそうなら、治したいです。
  • 会社が憂鬱・・・転職して半年が経ちましたが、会社に行っても動悸がしたり、前までできていたような仕事すらできなくなってきて、ストレスに思うことが多い。

 

正直、私は数年前から自分でADHDの気配があると思っていた。もし私が本当にADHDであるのならば、会社が憂鬱なのも、 元をたどればADHDであることが原因なのではないか?と勝手にそう思っていた。

もっとも、今思えば、会社のことだけ書くのはどうも気が引けてしまったのも理由としてあると思う。そんなことでクリニックにいっていいのか、なんだか申し訳ない気持ちがあったのだと思う。

 

最初に先生はこう聞いてきた。

「ここに2つの悩みが書いてありますけど、一番悩んでいることはなんですか?」

 

私は即答した。「会社の方です」と。

そこから先生のヒアリングが始まった。自分で選んだ会社なのか、会社のどんなところが悩みなのか、その原因は取り除けるものなのか、苦手な仕事をしている実感はあるか、など。

 

先生

「それはいつくらいから始まりましたか?」

 

「年末・・・くらいには一回そんな症状があって、会社に行きたくなかったり憂鬱な気分になったのですが、年末年始の休みを挟んで少し良くなって。でもここ1、2週間で急激にひどくなって・・・誰かの足音が聞こえるだけで、ドキドキしたり。前の会社だったらできていたような仕事も頭が回らなくて、ボーっとしてしまったり・・・なんかもういなくなっちゃいたくなって・・・」

 

 

ひと通り会話してから、先生はひと息ついてこう言った。

 

先生

「聞いたことあるかもしれませんが、“適応障害”ですね。今の状況が辛くて耐え難い、会社に行きたくない、そんな思いから体に症状がでてきています。適応障害の一番の治し方は、ストレス源から距離を置くことです。このままでは危ないので今日診断書を出します。会社を休んでください。」

 

言葉が出なかった。

 

(これって適応障害なんだ・・・)とか(聞いたことはある・・・けどよくわからないから後でググらなきゃ・・・)とか(会社休むの・・・わたし?!でも今動いてる仕事どうなるの?今の会社、コピーライター私しかいないよ?)

いろんな感情が頭の中を駆け巡った。

 

先生

「この話をお母さんやお父さん、恋人や友達には伝えましたか?」

 

「両親にはさらっと「会社ちょっと合わないんだよねー」と言いましたが具体的には言えてなくて。友達には2人ほど言っていて、今回病院行くのも背中を押してくれました。彼氏は・・・私が悩みを打ち明けても『人とか会社とか合わないなんてどこでもあるじゃん』って言ってきたので・・・それからはもう相談しないようにしています。」

 

先生

「確かに合う・合わないという話はどこにでもありますけどね、ハシさんのその症状はどこにでもあるものではありません。会社にいて動悸を起こすなんてどこにでもある話ではないんです。だからハシさんは休むべきなんです。」

 

泣きそうになった。ずっと心のどこかで、「やっぱりこれって甘えなんじゃないのかな」と思っていた。心の奥底では、私が弱いだけで、彼氏の言いたいこともわかっていた。彼氏の言うことだって正論だと思う。でも、それでも彼氏なんだから共感くらいしてほしかった。

それを先生は理路整然と彼の意見を一刀両断して、私の味方をしてくれた。それだけでもう、救われた気持ちだった。

 

そのあと、先生は今日処方する薬の話などを説明してくれた。

そして、先生は最後にこう言った。

 

「憂鬱な気分が始まり一人でいると、どうしても消えてしまいたい、いなくなりたいと思うことがあるかと思います。会社を休んで一人になる時間が多くなると余計その気持ちに拍車がかかるかもしれません。でも、今この弱った状態で人生の節目を迎えるのは勿体なさすぎます。どうか、自殺だけはしないでください。約束してくれますか?」

 

 

私は泣きながら「はい」と答えた。

 

この先生は信じることができる。そう思い、診断書と処方箋をもらい帰路についた。

夜遅かったので、薬は次の日もらいにいくことにした。

 

その日の夜、「長い1日が終わった」と、ほっと一息ついた。

封をされた診断書をぼーっと眺めながら、今日は木曜日で・・・明日は金曜日かぁ、と曜日を確認する。

とりあえず明日は普通に会社に行って、週明け、月曜日に人事にこのことを話せばいいかな。

 

先生はああ言ってくれたけど、いくらなんでも明日から休むのは、失礼だよね。コピーライター私だけだし、明日仕上げなきゃならないコピーあるし。でも一応、御守り代わりに診断書は持っていくか。

そう思って、PCケースの中にそっと診断書を入れた。